第三のチンパンジー(ジャレド・ダイヤモンド)
名古屋の在留ビザ申請専門の行政書士の金丸です。たまには書評でも
人間とチンパンジーは、遺伝的には同じ属として扱われても間違いではない。両者のDNA構造は、98.4%同じなのだ。宇宙人が地球上の生物を分類するとしたら、人間はボノボ、コモンチンパンジーに続き、第三のチンパンジーとして彼らと同じ仲間に分類されるだろう。
しかし、実際、人間とチンパンジーはかなり異なった生物である。人間はより高度な言語をあやつり、芸術を愛で、タバコや酒といった快楽に浸る。わずか1.6%の差が我々人間とチンパンジーをここまで隔てているのだ。その差の正体は、まだよく分かっていないようだ。
本書は、人間だけに見られる特殊な行動の起源が何なのかについて、客観的な情報を元に考察している。例えば、人がタバコや酒などの快楽に浸る理由を、著者は「ザハヴィの理論」を用いて説明している。その内容は、自己破壊的な行為をすることで女性を惹きつけようとしている、という理論である。
「ザハヴィの理論」の例として、ゴクラクチョウの例が挙げられている。雄のゴクラクチョウは、必要もないのに尾羽を90センチも伸ばしている。天敵に見つかる可能性が高まるにも関わらずだ。しかしゴクラクチョウは、尾羽を伸ばすという自己破壊的な行為によって、雌の気を引いているのである。
タバコや酒などに関しても同じことが言えると著者は説明する。タバコや酒に浸るという自己破壊的な行為によって、異性を惹きつけようとしているというのだ。しかし現代において、タバコや酒はモテるための要因かといわれるといささか疑問だ。あくまで、それら快楽に浸る起源は、「ザハヴィの理論」にあるのではないか、というのが著者の主張である。
また本書では、ジャレド・ダイヤモンドの名著である「銃・病原菌・鉄」、「文明崩壊」、「人間の姓はなぜ奇妙に進化したのか」の要点が紹介されている。「銃・病原菌・鉄」では、なぜ白人が黒人を支配し、その逆は起きなかったのかという問いに対して、ダイヤモンド氏は客観的な史料を基に考察した。「文明崩壊」では生き残る文明とそうでない文明の違いについて論じ、「人間の姓はなぜ奇妙に進化したのか」では、人間の複雑な性生活について述べた。本書を読めば、ダイヤモンド氏の名著の要点が一気に手に入るのだ。
人類史はとても興味深い分野の一つだ。本書は、人類史の入門書ともいえる。一読すれば、人類史に興味が湧くこと間違いないと思う